「なご美会」熊谷正春 |
と言っても、ピンときませんか? 「小惑星イトカワ」、「はやぶさ」という単語でわかりませんか?
そうです、7年にわたる宇宙の旅をおえて地球に帰還できた宇宙探査機「はやぶさ」が、奇跡的にも「イトカワ」に着陸し、そこから持ち返った微粒子を北大に設置している『同位体顕微鏡』を用いて分析し、約46億年前の太陽系誕生当時の姿と謎に迫ろうというロマンのある研究をしている先生の話です。
イトカワは、サツマイモのようないびつな形をした小惑星で、地球と同じく太陽の周りを公転しているが、もっとも長い部分でも約540メートルしかなく、天体同士が衝突して惑星になりきれなかった姿と考えられています。 そこに存在する石は衝突してできた当時のままの組成と考えられています。
はやぶさが持ち帰ったイトカワからの微粒子は約1500個あり、大きさは最大で0.1㍉ほどのもので、はやぶさのカプセル内から見つけ出すのにひと苦労したそうです。
太陽系内の酸素原子は質量の異なる同位体が3種類存在するそうで、地球上に一般的にみられる酸素は酸素16(O16)というものです。 原子核に中性子が1個多く含まれる酸素17(O17)と、2個多く含まれると酸素18(O18)という同位体となり、数字の大きい方が質量は重いが性質はいずれも同じということです。 それらの構成比率は惑星や隕石によって異なることもわかっています。
地球上の同位体酸素の割合は、99.8%がO16で、O17とO18は共に極微量です。今回、イトカワからの微粒子の同位体酸素の構成比率を(O17/O16を縦軸にO18/O16を横軸にして)グラフに描いてみると、地球上のものと全く異なることがわかりました。
月は45億年前、地球に火星ほどの大きさの天体が衝突した時、ちぎれてできたと考えられているので、月に存在する「水」は地球由来だと思われていたが、圦本教授らの同位体顕微鏡を用いた「月の石」の分析から、そうでなかったことがわかったと言います。 月の内部に含まれている水は、水素と重水素の割合が地球のものとまったく違っていることがわかりました。
そこから考えられることは、地球の重力が大きかったため月が形成される時、地球上の水の多くはそのまま地球に残ったという意味です。 月の水は、ハレー彗星や百武彗星などの水に近かったので、月がドロドロに溶けていた時代に多数の彗星が衝突したことによって、彗星の水が月に取り込まれていった可能性が考えられるということです。
同位体顕微鏡という特殊な機器を活用することで、世界的に通用する仕事(研究)を成し得ている先生に敬意を表したいと思います。 1969年、アポロ月面着陸のニュースを衝撃を持って聞いた小学3年の圦本少年が、その時から宇宙への夢を持ち続けて現在に至っているという人生も羨ましく、素晴らしいと思いました ネ~