2010年8月2日月曜日

潰瘍性大腸炎とインターロイキン

 20~30代の若い人が、血便・下痢などを繰り返して発症する大腸の病気に、潰瘍性大腸炎(UC)という病気があります。 最近、患者数が増え、治療によっていったん治っても、再発を繰り返すなどやっかいな病気です。 アメリカでは100万人とも、日本でも10万人の患者数がいるとも言われています。

 今まで、多くの研究者が、その原因追究をしてきて多くの成果がみられ、その治療にも種々の方法が発表され、各々症状の改善に貢献してきております。 

 しかし、治療の効果が一定せず、個人差があるなどとも言われて、もっと決定的な事があるのではないだろうか?・・・と思われてもいました。


 今回その難治性のUCについて、浜松医大の杉本健先生が、米ハーバード大学との共同研究で、一つの画期的な事実を発見し、治療にも役立つ方法をも開発したと発表されました。


 杉本先生は、自然にUCを発症するマウスの大腸で、インターロイキン22(IL‐22)と結合する受容体が多く存在することを発見し、そこに注目して研究を発展させました。 実験でマウスの大腸のIL‐22を増やすと、粘膜を保護する働きのあるムチンを作る杯細胞が増加し、できたムチンによって症状は改善されました。  逆に、IL‐22を中和(減小させる)すると、症状が悪化しました。


 インターロイキン(IL)については、阪大の岸本忠三教授がIL‐6を発見し、リュウマチなどの臨床治療におおいに貢献していることを、7月7日付けのブログでも話題にしましたが、現在30種類ほどが発見され、その意義などが検討されているそうです。 


 今回の発見に対して、滋賀医大の安藤朗教授は 「われわれもIL‐22の発現がUCの病変粘膜で増えていることを見出していたが、そのIL‐22が何をしているのかわからなかった」 と話して、将来の臨床応用への可能性を示した点が画期的だとも述べています。 


 ところで、おそらく杉本先生は、ハーバード大に留学されて、今回の「IL‐22とUCの関係」についての大発見をしたのでしょう。  海外への頭脳流出ということが言われたのは、もう随分とむかしのことのように思うのだが・・・。  そこで、UCの病変の大腸粘膜の病理学的特徴を思い出してみると、病変は粘膜上皮に限られ、①杯細胞の減少、②腸陰窩の萎縮、③単核細胞浸潤です。


 ①は、杉本先生が指摘してます。 ③は、免疫細胞のことで、IL‐22というタンパクの発現に関係していると考えられます。 ①のためにムチンが減少し、粘膜の保護ができなくなり、潰瘍になっていくと考えられますから、何十年も前から病変組織を観察してきた病理医の眼からみても、杉本先生の発見は正しいのだろうと思われるんです ヨ