2011年1月20日木曜日

ピロリ菌と胃がん(6)

「向日葵会」早瀬信子
前回の(5)報では、ピロリ菌を感染させたスナネズミにMNU(Nメチルニトロソウレア)という発がん物質を投与することで、胃がんができることを説明しましたが、今回は疫学調査の結果をお話します。

呉共済病院に勤務していた上村直実先生らが1500例余りの胃疾患患者を8年間、年一回の内視鏡検査をしたところ、ピロリ菌陽性者から3%の胃がん患者が発見されたのに対し、ピロリ菌陰性者からは1例の胃がんの発症もなかった。 この事実が医学の分野では最も権威のある雑誌のひとつである『New Eng. J.Med.』に発表されるや否や、世界的な反響を呼び、世界各国のガイドライン作成に大きな影響を与えたそうです。

同じ頃、九州大学から男性においてピロリ菌陽性者は陰性者の約3倍胃がんを発症したという発表があった。 これは、高血圧について長期間疫学研究している久山町研究のデータだったのです。

これら“胃がんとピロリ菌感染の関係”を世界に先駆けて発表したのは、いずれも日本からです。 なんと素晴らしいことでしょう。

ピロリ菌による胃がんの発生メカニズムには2つの考え方があります。 1つは、ピロリ菌自身には発がんの働きはなく、菌の感染によって胃粘膜が慢性萎縮性胃炎をおこし、それが何らかの作用でガン化していくというものと、2つ目はピロリ菌自身が発がん促進物質として影響をもつというものです。

詳細は省きますが、北海道大学の畠山昌則先生(現 東京大学)らは、ピロリ菌が胃粘膜に接着すると、菌体からCagA蛋白が胃細胞に注入され、細胞の情報伝達に関わる酵素の活性を亢進させることを発見した。 胃細胞に増殖因子と同様の刺激を与えている(発がん機構に関連)ことが示唆されたことになるそうで、『サイエンス』という科学の世界ではもっとも権威のある雑誌に掲載され、国際的な評価を得ました。 

この分野では、その後もガン化を巡る発表がなされているが、日本人の研究者が一歩リードしてしている。 頼もしい限りです ネ
(次回は、胃がん検診について)