2011年1月11日火曜日

ピロリ菌と胃がん(5)

食塩摂取と胃がんの関係
疫学的には、尿に排泄されるナトリウムを測定することによって、食塩の摂取量を推定し、胃がんの死亡率との関わりを検討した論文があり、それによると両者は正の相関をします(右図)。

米国やメキシコ、デンマークのように食塩の摂取の少ない国の胃がんの死亡率は低く、日本や韓国そして中国、チリ、ハンガリーのような食塩の摂取の多い国の胃がんの死亡率は高かった。

わが国では、、戦後家電製品の普及が進み、特に冷蔵庫による食品の保存方法が一般化したことにより、塩分摂取は減ってきており、それが胃がんの発生数の減少に寄与していると考えられています。


一方、動物実験では、北海道大学の消化器内科の加藤総介先生が、愛知がんセンター研究所の立松正衛先生の指導でスナネズミ発がんモデルを用いて、ピロリ菌感染と食塩が、どのように胃がん発生と関わっているかを検討している。 

スナネズミ発がんモデルでのピロリ菌と食塩の関係
発がん物質のMNU(Nメチル ニトロソウレア)を投与した後、ピロリ菌を感染させると胃がんはある一定の頻度で発生します。 そこに、食塩濃度2.5%、5%、10%となる餌を同時に食べさせて胃がん発生に及ぼす食塩の影響を観察しました。

その結果は右図‐2のようなとてもきれいな成績が得られました。 高濃度食塩になるにつれて、胃がんの発がん率も48%まで上昇させました。 もっと重要な事実は、ピロリ菌を感染させなかったスナネズミからはほとんどガンが発生しなかったということです。 

つまり、ピロリ菌の感染がなければ、食塩は発がんを促進させる要因にはならないこともはっきりしたということです。(次回はピロリ菌関連文献)